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「音響建具」のディテール〜黄金比と白銀比の融合〜

こんにちは! 香川大学大学院修士2年の川嶋です。

今回は、「音響建具」の具体的なデザインの成り立ちをお話したいと思います。

なぜ私たちが音響建具を製作することになったのか、その道のりについては前回のブログに紹介しています。興味のある方はこちらからご覧ください。

改めて私たちが提案する音響建具を紹介します。

左が黄金比、右が白銀比を元にした音響建具

豊島邸の座敷の壁3面に12枚の音響建具が取り付けられる予定です。

なぜこのようなデザインになったのかお話したいと思います。

私たちは豊島邸の畳の部屋4室を床に座る畳の部屋2室と椅子に腰掛ける板の部屋2室に計画しました。その日本と西洋の文化から着想を得て、古くから日本で愛されていた白銀比と西洋で美しいとされてきた黄金比を取り入れることになりました。

建具に黄金比や白銀比を取り入れようとするのですが、建具そのものの寸法がこれらの比率を満たしていなかったため、どうすればよいのかメンバーと悩みました。

​そこで、パネルとして入れ替えが可能な大きさにすることを想定し、建具をまず4分割することにしました。

黄金比の1:1.618と白銀比の1:1.414を基に、縦を1とした時の横が1.618、1.414の比率の長方形のパネルを作りました。

建具の枠


すると、写真のような縦が約40cmで横が5~60cmの赤と青で囲った大きなパネル、横が2~30cmの黄緑と紫の小さなパネルができました。そして、左右交互にそのパネルを配置してみました。

次に組子を入れるための枠組み、「地組」のデザインを紹介します。

先ほどの写真の赤で囲った大きなパネルは、正方形を並べてできる黄金比の特徴を活かして地組を考えました。

正方形を並べてできる黄金比


青で囲った大きなパネルは、白銀比の半分にしても2倍にしても白銀比になる特徴を活かしました。

半分にしても2倍にしても白銀比


黄緑で囲った小さなパネルは黄金比を、紫で囲った小さなパネルは白銀比を回転させて、新しい地組の模様ができました。

黄緑で囲った小さなパネル

紫で囲った小さなパネル

ここで地組が完成できました。

次は地組の中を埋める「組子」です。

音響効果を期待させるため、森本建具店と話し合い、地組を傾斜させる技術「四方転び(しほうころび)」を組子に応用させたものを提案していただきました。

その組子を赤と青で囲った大きなパネルに用いました。

傾斜の角度を20度30度40度の3種類を用意し、同じ大きさの正方形、長方形の地組の中に埋めていきました。角度が変わるごとに正方形や長方形が大きくなっていくさまを感じてもらうデザインにしました。全てに組子は入れず、一部空けて変化をつけました。

赤で囲った大きなパネル

青で囲った大きなパネル

こうして大きなパネルは完成しました。

小さいパネルの方では、傾斜をつけていない三角の部材を入れました。黄金比、白銀比の螺旋や扇の形に沿うように組子を入れ、2つの比率の仕組みを知ってもらうデザインにしました。

黄金比の渦

白銀比の扇

小さいパネルができました。

そして、大きいパネルと小さいパネルを組み合わせると、

最初に見せた写真ができ上がりました。

こうして音の反射を調整でき、見る角度でデザインが変化し、鑑賞者がパネルを入れ替えられ、より音と模様をカスタマイズできる音響建具が実現しました。

座敷の3面に建具が入ったイメージ

3面に建具が入った状態まで、地域の人を呼んで自分たちのプロジェクトを知ってもらうきっかけづくりとして組子製作ワークショップを2回行い、現在はプロジェクトメンバーと森本建具店様と製作中です。(ワークショップの様子はこちら

ぜひ、豊島邸に足を運んで音響建具を感じていただきたいです。

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